来た波に乗る
出張施術専門の会社での修行は1年を過ぎた。
趣味の釣りにもほとんど行けないくらいガムシャラニ働いた。
長い時の勤務時間は15時間にも及んだ。が、楽しかった。目標としていた指名上位も獲得していたし、ここで出来る事はやった感があった。
そんなおり、ひょんな事から整体サロンのオープンを手伝って欲しいとのオファーを頂いた。
『なんて都合の良い話だ!』と眉につばを塗る人もいるかと思うが、ここに書いているのは正真正銘すべて本当。問題は“波が来た時に乗っているか?”という事だと思う。
良い波が来ている事に気付かない、もしくは気付いても乗れる体勢じゃないって人が多いように思う。不詳伊藤は昔から、フットワークだけは軽い。
会社を円満(?)に退職し、翌日からオープニングスタッフとして加わった。
ここのオーナーもいわゆる経営者だったので、経営の数字に関すること意外を私が請け負ったような感じだった。 期間は6ヶ月。
スタッフの面接なども任されて沢山の人を見たが、正直驚いた。いや、世の中には色んな整体の学校があるものだなと・・・。
フルタイムではなかったので、この間に自分の開業に向けての準備をちゃくちゃくと行なった。
スタッフの教育をしながら手技の確認。この店用に作った問診表は、今私が使っているものと同じだ。
ホームページもこの期間中に粗方こしらえた。
考えに考え抜いたチラシを印刷屋に発注し4万枚刷った。
もちろん6ヶ月の間、このお店の為に私が出来うる事にも手を抜かなかった。整体サロンとして営業できる状態にはしたつもりだ。
そしてついに『からだ応援団』旗揚げの時となる。これだけ読んでいるとまるでトントン拍子だが、今考えると“来た波に乗っているだけ”なので計画はとてもとても甘い。旗揚げは夏真っ盛りの7月中旬だった。夏と冬のオープンはやめた方がいいですよ。いやホント。
人のフンドシ
整体サロンの契約期間を終了し、夏真っ盛りの7月中旬、ついに『訪問整体からだ応援団』旗揚げの時となる。
とは言え、訪問専門なので看板を掲げたわけではなく、大々的な広告宣伝をする費用も無かったので、人知れずひっそりと旗揚げ。
事務所は自宅。電話も自宅の電話をそのまま転用。
親類縁者施術作戦はもう使えないので、頼みの綱はホームページとチラシしかない。
『働いていたところからお客さんをスカウトしたのか?』とよく聞かれるが、義理とか人情とか結構好きな私は一切手を出していない。
集客が一筋縄ではいかないのは既にわかっていた。
そこで、訪問施術の仕事が入りにくい日中、どこか常駐させてもらえるようなスペースはないものかとあちこち探し回り、とある酵素風呂屋さんに飛び込んで営業し、ベッドを置かせてもらう事になった。
昼間はここでクイック的な施術をし、夜は訪問。ここから本客へ繋がる人もいるだろうし、一石二鳥の戦略だと思った。・・・・がしかし。風呂屋の主人とまったくウマが合わなかった。
原因は私にある。人のフンドシで相撲を取る時の立ち振る舞いを知らなかった。お互いにとても惜しい事だが、ウマが合わなければ致し方ない。結局ここでの施術は2ヶ月で撤退となった。
ちなみにここでは、最初の月に5万円、2ヶ月目は10万円ほど売れた。
さて、からだ応援団は営業時間を夕方からとしてチラシを作ってしまっているので、いきなり日中暇になった。どうしたものか・・・・・
再び行き詰る
からだ応援団の受付は『夕方から』*1としてチラシを作ってしまっているので、お風呂屋さんからベッドを引き上げてから日中暇になってしまった。しかもこのチラシ、大枚はたいて大量に作ってしまったが、ほとんど反応が無いときている。貯えは底を付いてるから食いぶちは稼がなければならないわけで・・・。選択は2つ
- 日中治療院でバイト
- 日中まったく関係の無いところでバイト
ブッチャケお金が欲しかったので、私が選んだのは、『一見関係ないところでバイト』。
治療院ではヘトヘトになって働いても時給800円程度だし、時給の良いサロン系では『日中だけ』なんて話が通るはずも無い。
どうせなら出来るだけ短い時間でしっかり食いぶちを稼ぎ、ついでに何か使えるスキルを身に付けよう。私が選んだのは、時給950円のスーパーマーケットでのバイトだった。
『ものを売る』最前線で買う人の心理も観察してみたかった。 時間的にも融通してくれたので、本業に差し支える事もなさそうだった。
あとは(いつも?)『気合』と『根性』でしょう。
※1 出張専門施術会社に勤務していた経験から、出張施術が入りやすい時間だけを営業時間とした。 夕方から深夜までで4人の施術。それが目標でした。この時間帯なら、デリカシーある停め方をすれば駐禁をきられる事もまずない。(事実伊藤は10年訪問整体をやって駐禁ゼロです)
売れるにはわけがある
食いぶちを稼ぐためにはじめたスーパーでのバイト。
品出しと雑用の肉体労働が中心かと思いきや、7件もの問屋を相手に仕入れからロス管理まで任されることになった。
値入25%という大まかなガイドラインはあったが、売価もほぼ自由につけて良いので、これが意外なほどおもしろかった。
私が担当したのは、飲料・お菓子・調味料(グロッサリー)等だが、いわゆる『指名買い』は極わずかなことを知った。コカコーラ、アクエリアス、キッコウマンの醤油、にんべんのつゆ、カルビーのポテトチップス・・・・・くらいのもので、あとはほとんど『衝動買い』。
使命買いされるものは、多少高くても多少変な場所でもお客さんが探して買ってくれるが、それ以外のものは置き場所やPOPによって売れ方が天と地ほど変わる。
つい手にとってしまう絶妙な場所や、「買わなきゃ!」と思うPOPがなければ、多少安くても売れない。
もちろん『安い』というのも理由のひとつではあるけれど、半端な安さは今の時代買う理由にはならないのだなぁと実感。仕入れ値で出したって売れないものは売れない。
これはつまり、60分6000円の整体と60分5000円の整体では大した差はないってことに繋がる。
『半端な安さは買う理由にならない』ということを沢山試せたのは、このバイトで得た貴重な体験です。 実際に私がつけたPOPでウケが良かったのは・・・・・
- ようやく入荷!
- オリゴ糖はビフィズス菌のエサです(ヨーグルトの側で展開)
- 売れ残りの商品は、原価ギリギリまでの値段+○日までの超特価!
- 1200円もするシソ油に、必須脂肪酸の必要性を長々と説明するPOP
などなど。 理由がなければ売れないということをつくづく勉強させていただきました。接客も良い勉強になったと思います。 ちなみに、この頃の出張整体の売り上げ・・・・・・月5万円ほど。
噂の壁
スーパーのバイトでどうにか食えているので、気持ちには余裕があった。
おかげでホームページもちょこちょこいじれて、少しずつ新規も入りだしリピーターも増えてきた。
そんなおり、以前売込みをかけていた整体の母校から非常勤講師の依頼がきた。自分から売り込みを欠けた理由は2つ。
- 教えるスキルを身に付ける
- 支払った授業料の回収
野望を持ち続けていれば結構叶うものです。つまりここから・・・・
- 昼5日スーパーでバイト
- 昼1日非常勤講師
- 夜6日訪問整体
と三足のワラジを履いた事になる。後に手力整体塾の元となるテキストを作り、『伝える』方法を模索していきました。こんな私でも、わざわざ遠くの校舎から受講しに来てくれる人や、補講チケットを買ってまで参加してくれる人もいて、随分と勇気と自信を頂いた期間でした。
3足のワラジを半年履き続けましたが、あくまでも“本業”である出張整体の売り上げは伸び悩んでいました。師匠も言っていた10万円の壁です。
『ん~~・・・・これがウワサの壁か・・・・・』 そこでオモムロニ決意しました。
『頭の中を整体一色にしよう!』 貯金もほとんど無く、集客のあてもありませんでしたが、ひと月の収入の半分以上を稼いでいたスーパーのバイトを辞める事にしました。 ・・・・・・・で、どうなったか。
成長編へ続く↓