日本人女性の有訴(感じている症状)者率堂々の1位(男性では2位)肩コリ。
腰痛(男性で1位女性で2位)と並んで国民病などとも言われます。そんな風に言われると、他の国の人達は肩コリや腰痛など厄介な症状に悩んでいないのかしらと羨ましく思う人も居るかもしれません。

アメリカ人(欧米人)は筋肉量が多いので肩が凝らない』
『西洋人は頭が小さいから肩が凝らない』
などなど。マコトシヤカに囁かれることが未だにあるようですが、当たり前を綱繋いで実態に迫ってみます。

肩コリは漱石が創った造語

1度冷静になって、凝っているのは本当に肩かどうか感じて見ましょう。そもそも肩ってどこでしょう・・・

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ここが肩です。 そこは肩甲骨の突起(肩峰)が肩の関節を守るように覆いかぶさっているところです。触ってみて下さい。硬いでしょう?骨ですからね。

日本人が言う“肩こり”とまったく同じ症状は当然ながら欧米にもあります。
ただし肩こりという言葉が存在せず英語圏では“Stiff Neck”と言う。硬い首。つまり首コリと表現します。症状は同じで表現が違うだけです。(NYCにて確認済み)

スタテンアイランドフェリーから自由の女神を眺める
スタテンアイランドフェリーから自由の女神を眺める

ちなみにフランス語では“mal au dos”(マル オ ド)と言うそうで“dos”は背中をさします。

これはひとえに、文化の違いとする説が濃厚のように思います。
確かに日本では、肩を怒らせて歩いて肩が触れてケンカになったり、肩に雨がそぼ降ったり、肩を叩かれて早期退職したりします。何かと肩を重要視してきた日本人特有の表現。have a stiff neck をわざわざ『肩がこった』と訳すほど大切にしている何かが『肩こり』の元です。

夏目漱石が小説『門』の中で「肩が凝る」という表現をはじめて用いたと言われています。で、この言葉が生まれたせいで肩コリという症状も生まれたとする説もあるようですが・・・そんなわけない。ずーっと昔から同じ症状はあるはずです。人間だもの。

『門』以前にも樋口一葉が「肩が張る」と言う表現を用いており・・・
Wikipedia

一葉さんの表現にも“肩”という部位の問題はあるようですが、漱石さんの『凝る』よりは『張る』の方がずっと正確な表現だと思います。『凝る』という言葉に惑わされてその部位をグイグイ揉みほぐしたりしませんように。

マサイ族には腰痛がない?!

『腸腰筋が太いマサイ族には腰痛がない』
随分前にアフリカ系の陸上選手と日本の陸上選手のMRI画像を何かの番組で見たことがありますが、確かに腸腰筋(大腰筋)の太さは2倍ほどアフリカ系の人の方が太かったです。
日本人の私達はどれほどトレーニングしてもあの太さになることは難しいそうで、故に、脚を高く上げる必要がある短距離走やジャンプ系の競技で日本人が活躍するのは難しい事が伺いしれます。

アフリカや南米に腰の曲がったお祖母ちゃんがいる様は確かに思い浮かびませんが、だからといって腰痛がない理由にしてしまうのはいささか早計でしょう。

『人種の差』で語るのはあまりにも単純。ある意味人種差別だとも思います。We are all oneでなくちゃ。
日本だって食べ物はじめ生活様式の欧米化が進んで、昨今の若者は実に脚が長く頭が小さく、欧米人にもけして引けを取らない体型をしています。大体、体型や筋肉量などは人種の差よりも個人差の方がよほど大きいです。

コリ(痛み)は筋肉の酸欠

肩コリも腰痛も膝痛も、筋骨格系の痛みは筋肉の酸欠。これはもう紛うこと無き21世紀の常識です。筋の酸欠で不完全燃焼⇒痛み物質発生⇒受容器が受理⇒脳で判断。これが慢性的な痛みの生理です。

筋肉量が多ければ多いほど酸素消費も増える。筋肉に見合った酸素が供給されなければ痛みが出てくるわけです。

だから整体していて厄介に感じるのは、学生時代にバリバリ運動していて社会に出た途端パタっと運動しなくなった人。立派な筋肉は自らがしっかり動いてポンプしなければ直ぐ酸欠に陥ります。
『健康に生きる』が目的なら、筋肉なんて必要最低限の方がかえって良いのです。

8000m峰14座を制覇した唯一の日本人登山家竹内洋岳さんは、驚くほどガリガリ君です。

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1番左が日本一の登山家ほっそい竹内さん。その隣ワタクシ。

8000m以上のデスゾーンと呼ばれる高度では酸素濃度が地上の1/3しかありませんから、必要以上の筋肉で酸素を無駄遣いするわけにはいかないのです。

自分が何を求めているのかを明確に。こと、痛みを遠ざけ元気に楽しく健康に暮らすことが目的なら筋トレなんぞしなくて良い。特定の筋肉の出力を上げるより、全部動かせるかどうかの方がずっと大事です。

陰陽は目線ひとつで変わる
陰陽は常にセットで存在して目線ひとつで変わるのです

アメリカ人でも肩はコリます。そんな事よりも大切なのは『日本人だから』なんて言ってもしょうがないことは言わない事です。出来ない事を考えるより出来ることをやる。肩コリ・腰痛が有訴率ワン・ツーの日本人に必要なのは、筋肉や骨格の違いを嘆くことじゃなく身体の使い方を知ること、本当の意味での“体育”を知ることです。

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書いている人

パンチ伊藤
あっとう言う間に整体師歴19年。現役で施術する傍ら小さな整体塾を主宰しています。当たり前な解剖生理と簡単な物理を繋いだわかりやすい身体の話が得意。釣り/山/島/音楽/映画/生きもの/が好き。2020年から自然農の畑やってます。

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